著名なヨガスタイルでもない。メディア媒体を背景に抱えているわけでもいない。いくらヨガ教師とは言え、カメラの前に立てば、どうしても緊張してしまう素人の仲間。有名なモデルを起用することなく、撮影に疎い素人の教師たちが行うヨガを、DVDとしてどこまで観るに値する状態に高めていけるか、ということも大きなテーマでした。そのために、最初からパケージのデザインとタイトル名はプロに任せて、器はだけでもまずは整えました。

ここからいよいよ、DVDの中味です。

クリパルヨガで大切にしたいのは、自分の中にある可能性や希望、力強さや自信だけではありません。誰もがもっている心の不安や未知への畏敬の念だったり、やるせなさや刹那さ。悲しみや苦しみ、戸惑いや憧れ、苛立や恐怖心だったりします。明るく力強いエネルギーの表現は、比較的簡単かもしれませんが、むしろ難しいのは人間の抱く複雑な心のあり方です。一般的には、影に押しやられてしまう繊細で受け止めにくい心のあり方を、そのままに、あるがままに感じたり表現してもいい雰囲気をDVDで出したい。

ポーズの形ばかりでなく、むしろ、全体のプラーナ・エネルギーの流れです。それぞれのポースから醸し出されるエネルギーであったり、ポーズをとるために体を動かしている教師から表現されるエネルギーをどうしたらDVDで一般の人々に伝えられるかです。

撮影と粗編集が終わり、自分がインストラクションを録音する段階で感じたのは、もう自分はその撮影の現場にいないという現実でした。いつものクラスなら、自分と生徒とのエネルギーの交わりの中から言葉や抑揚が生じてくるのですが、映像を見ながら、それに合わせながらインストラクションを録音する時には、いつもあるライブ感に欠けていました。

「出来上がった映像に言葉だけのインストラクションだけでは、クリパルヨガが表現しようとしているエネルギーを表現することは難しい」と感じました。そこでコーディネーターに相談して、急遽、プロに音楽を作ってもらうことにしたのです。とは言っても、音楽にもピンからキリまであります。限られた予算と時間の中で、果たして、自分がイメージするような音楽を作ってもらえるだろうか?

そんな不安を抱きながらも、紹介してくれたのが、日本においてスノーボード・サーフィンを筆頭に、数々のスポーツシーンにおいてトランス・クラブミュージックを導入、浸透させた第一人者である Chatanix (茶谷氏)でした。彼がこのヨガDVDの音楽作りにかなり強い興味と情熱を持ってくれたことは、サンプル音楽を、1〜2日のうちに作ってしまったことで分かりました。

最初の印象は、癒し系のBGMくらいにしか聞こえなかったのですが、何度か聴いていくうちに、かなり細かいところまで、映像に合わせてメロディーやリズム、テンポを変えて表現してくれていることに気づきました。何よりも、プレゼンで会った時に、こちらの希望と意図を聴き取り、それに合わせた作品作りをしようという真摯な姿勢に信頼を感じました。

最初から分かり易く、気に入ったのは、エネルギーを高めていくヴィラバドラ1〜女神シリーズやヴィラバドラ2、そして、セツバンダアーサナ〜アルダ・サルバンガ・アーサナ(半肩立ち)で流れる力強い曲でした。チャプター2でエネルギーを高めた後に続くスター・ゲイザー〜鶴のポーズ(バラキカ・アーサナ)は、心の微細な揺れ動きを感じやすい空間です。光から影への変化を求めた箇所で、ある意味、このDVDの中で一番こだわった部分です。曲のテンポが変わって「アレ!」と感じる人もいるかと思います。

そして、最後のエンディングで使われるゆったりと流れる曲はピッタリでした。妻は、この曲を聴いて泣いてましたが、自分も何度聞いても心が優しさで包まれます。

クリパルヨガDVD〜制作の裏話#1